印鑑制度編/日本での印鑑の役割

押印と捺印の違い

ここでは押印と捺印の違いについて解説します。

どちらも印鑑を捺すという意味で使われることはご存じかと思いますが、ここでは言葉の違いだけでなく、言葉のルーツも併せてご説明します。
それらを知ることで、実はそれぞれに全然意味が違っていることもご理解いただけます。

特にお客様から印をいただく営業職の方などは、覚えておいて損はないでしょう。

押印と捺印の違い


まず結論から申し上げると、どちらもハンコを捺す行為であることは、冒頭で述べた通りです。
そして厳密な違いとしては、それぞれが略語になっている点。

押印=記名押印の略
捺印=署名捺印の略

では次に、記名押印と署名捺印の違いをご説明するために、記名と署名の違いについてまとめておきたいと思います。
まずどちらも名前を表記することに変わりはありません。
ただし、その表記の仕方が違っています。

記名=パソコンやゴム印で表記された名前
署名=本人の手書きで表記された名前

つまり押印と捺印の違いは、名前の表記の違いであることがわかります。

さらに詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。

では次に、なぜこのように違う言葉が誕生したのか?
そのルーツをご紹介したいと思います。

押印と捺印のルーツ


言葉として先にあったのは「捺印」です。
それが1946年、当用漢字表の告示をきっかけに、該当した言葉として「押印」が作られました。

当用漢字表は、複雑かつ不統一だった従来の字体の一部に代えて、当用つまり「さしあたって用いる」漢字の表として採用されたもので、1981年の常用漢字表の告示に伴い当用漢字表は廃止されています。

また当用漢字にはルールがあり「当用漢字で書けない場合には言葉を変えるか、かな表記にすべき」とされています。
「捺」は当用漢字に該当しなかったため「なつ印」と書くか、それに代わる当用漢字に該当した新しい用語「押印」を作ったとされています。
ちなみに「押印」は法律などの文言で使われ、「捺印」はそのまま日常的に使われていたようです。

押印と捺印を細かく分けて見えてくることは印鑑の価値


正しくは、法律上は以下の4つに分けられます。

1.署名+捺印
2.署名のみ
3.記名+押印
4.押印のみ

法律上は、1〜3が同等。
4.は法的な効力は認められないとなっています。

実は日本の裁判では実印が捺してあるかが最も重要で、実は署名と記名に大きな差はありません。
以前からハンコじゃなくてサインでいいのでは?との意見が散見されますが、日本においては筆跡鑑定が難しいんですね。
なぜなら
・欧米のように、筆記体でないことから、同じく繰り返し書くのが難しい漢字という文字の特性
・欧米のように、小さい頃から同じサインを書けるように練習する文化がないため
・欧米のように、サインを登録していない
・上記の理由から、筆跡の立証が非常に難しい
などの理由が挙げられます。

つまり日本の契約においては、押印にせよ捺印にせよ、印鑑の有無が最も重要であることがわかります。
またここからは推測になりますが、言葉が省略された意味もここにあるように思えてなりません。
署名や記名などの名前の表記が省略されたのは、法律上の重要度なのではないでしょうか。
つまり署名か記名かよりも、印鑑が捺してあるか否か。
そして法律的に使われてきた「押印」一般的に使われてきた「捺印」の言葉だけが残ったのではないでしょうか?

まとめ

以上、押印と捺印の違いについてご紹介しました。

やはりどちらも印鑑を捺すという行為には違いありません。
またその違いは名前の表記の違い、そして当用漢字の影響を受けたことになります。

営業職の方がお客様から印鑑をいただく際には、このように使い分ければよろしいかと思います。

記名した契約書の場合:押印
署名も書いてもらう契約書の場合:捺印

いずれにしても実印をいただく契約は大きな金額を伴いますので、この辺りをきっちり理解して対応されるとよろしいかと思います。
それだけであなたの価値も高まりますので。

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


TOP