手彫り全工程

ここでは印章製作の命とも言える、手彫りの全工程をご覧いただきます。

印章の大切な役割として、唯一無二を守ることが挙げられますが、そのために手書き+手彫りの組み合わせは最強です。
とはいえなかなか目にする機会が少ないのもこの手彫り。
全工程を通してご覧いただくことで、なぜ手彫りが良いかをご理解いただけると思います。

今から約8年前に撮った写真ですが、当時初めてFacebookを通して全世界に公開するとあって、かなり力を入れて作った印です。
写真の雑さなどが気になりますけど、ご容赦ください。

 

手彫り印章彫刻作業

【印稿】設計図を書く

最初に「印稿(いんこう)」という、設計図を書きます。

印章は逆さに彫りますから、まずは正しい向きで。
毎日彫っていると逆さまでもある程度バランスは分かるようになるんですが、やはり正しい向きで書いた方がより正しく表現できます。
なんでもそうですが最初の設計図が最も大切な工程と考え、全てのご注文に際して必ず書いています。

そして一番のこだわりもこの文字。
どんな文字をチョイスし、どうんな風に表現するか。
つまりこの印稿デザインこそが職人の最大の個性です。
そのため構想に一番時間を必要とします。

 

【面丁】材料の彫刻面を平らにする

次に「面丁(めんてい)」と呼ぶ、材料の面を平らにする工程。

意外に思われるかもしれませんが、仕入れたままの印材って、面が平らじゃないんです。
ちょっとだけ削ってみるとよく分かります。

周りは白く削れてますけど、中心の部分の色が変わらずに残ってますよね?
これが凹みです。
だからその凹みが消えるまで、丁寧に平らに削ります。

これをきっちりやらないと、中心が写らない印になっちゃいますから、とても重要な工程の1つです。

 

【墨打】朱墨を印面に打つ

次に「墨打(すみうち)」という、朱墨を印面に打つ工程。

黒い印面に黒い墨で書くと見えません。
それに印面は結構ツルツルしているので、下地にするのも兼ねて朱色の墨を打ちます。

塗るんじゃなくて、打つ。
塗ると凹凸ができて筆が走りませんから、数回薄く打って朱を重ねます。

綺麗に書き、綺麗に彫るためのこだわりです。

 

【字入】直接文字を逆さまに書く


最初に書いた印稿を元に、材料に直接逆さまに書いていきます。

印稿と同じようにレイアウトするために同じ間隔の線を引き、鉛筆で下書きをしてから筆で書いていきます。
この最初の文字を入れる段階もとても重要です。
ここでどれだけ完璧に近づけるかで、仕上がりのクオリテイに大きく差が出ます。
鏡で照らして印稿と合ってるかどうか、細かくチェックしながら修正していきます。

「あれ、ちょっと右に寄ってるかな?修正、修正。」
といった感じです。

 

【荒彫】ざっくり彫り込む

次に「荒彫(あらぼり)」と呼ぶ、ざっくり彫り込む工程。

黒い部分と枠を残し、朱色の部分のみを彫り込んでいきます。
あくまで荒彫りですのでまだまだこれから。
とは言え、ここで手抜きをすると後が大変ですから、ここもまた神経を使う工程。

こちらは動画も撮ってたんで、貼っておきます。

 

 

【面丁】再度材料の彫刻面を平らにする

ここで再び「面丁(めんてい)」と呼ぶ、材料の面を平らにする工程。

何も削れていない最初の段階と違って、彫り込むと当たる面が減ります。
つまりこの段階の方が、より印面が平らにしやすいんです。
何度も平らにする工程を重ねて、写りの良い状態を作ります。

 

【墨打】再度朱色の墨を材料に打つ

ここでまた「墨打(すみうち)」と呼ぶ、朱墨を打つ工程。

黒いままじゃ切り口が見えませんから、朱墨を塗って仕上げやすくします。
特にこの朱墨は湿度の影響を受けやすいため、湿度に応じて溶かす水分の量を変えないと均等になりません。
均等じゃないと表面が凸凹して捺印の際に邪魔をしますから、素早く少ない回数で薄く均等に打ちます。

 

【仕上】削って文字を整える

最後に「仕上(しあげ)」と呼ぶ、削って文字を整える工程。

先ほどざっくりと彫り込んだ部分を、今度はその断面を削って文字を整える工程。
この仕上げで完成に大きく差が出ます。
ちなみに上の写真は外側の枠だけ仕上げています。

そして以下が「岡」のみ仕上げた画像です。

ちょっとづつ整っていくのが分かりますかね?
ピンぼけで分かりにくくてすみません。

ちなみにこちらの仕上工程は動画を撮るのを忘れちゃったので、別の動画になりますが、動きと雰囲気だけでもご覧ください。

 

そして「仕上げ」がほぼ終了。

若干線がゴツゴツしてるのが分かりますか?
あえてそう仕上げています。
「古印体」という書体は、切れ味スッキリに見せる見せ方とあえて線をガタガタさせ「味」を出す仕上げ方があります。
今回後者を選択しました。

あとは個人的に納得いくまで、捺しては削り、捺しては削りを繰り返していきます。
そして完成していきます。

 

【完成】

先の画像との違いは・・・きっと分からないと思いますけど、、、汗

 

最後に

鈴印では通常完成まで1週間ほどいただいてます。
30分で発送できない理由もご理解いただけるかと思います。
参考ですが印章彫刻の一番簡単な方法は「PCフォント+機械彫り」です。
上記の工程を全て省略してテキストを打ち込み、印材を彫刻機に挟んでエンターキーでスタートしますので、あっという間に完成します。

参考ですが鈴印で扱う印材の中で唯一手彫りができないのがチタンです。
ただし「手書き」の文字を使ってデザインを作り、彫刻終了と共に削除して唯一無二を守っています。

複製防止という意味ではやはり「手書き+手彫り」が最強ですが、最も肝心なのは最初の設計図です。
なぜなら手書きには、誰にも真似できないレシピが全て備わっていますから。

以上が印章手彫り彫刻の全工程になります。
印章彫刻には様々な手法が存在しますが、鈴印では初代より受け継がれた上記の彫刻方法で、今でもお客様を思いながら1本1本彫り上げています。

 

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