手彫り全工程

ここでは印章製作の命とも言える、手彫りの全工程をご覧いただきます。

印章の大切な役割として、唯一無二を守ることが挙げられますが、そのために手書き+手彫りの組み合わせは最強です。
とはいえなかなか目にする機会が少ないのもこの手彫り。
全工程を通してご覧いただくことで、なぜ手彫りが良いかをご理解いただけると思います。

まずは全体を通した動画をご紹介し、次にそれぞれの工程ごとに動画と合わせてご説明していきますので、お好みでご覧ください。

手彫り印章彫刻作業

タイトルには手彫りと書いていますが、正確には手書き文字+手彫りの全行程となります。
そしてこちらでは、作業工程を大きく7つの工程に分けてあります。

  1. 印稿(いんこう)を書く
  2. 文字を書く
  3. 印材を整える
  4. 文字を逆さまに転写する
  5. 荒彫り
  6. 印材を整える
  7. 仕上げ

では早速、順番にご紹介してきたいと思います。

 

①印稿を書く

1.文字の選定

印鑑を彫る工程の一番最初は「印稿」と呼ばれる設計図を書くことから始まります。

そのためにまずは辞書から文字を選定する必要があります。
ちなみに辞書に登録されていない文字を使うと、印鑑登録できなくなる恐れがあります。

辞書(新常用漢字印章字林)には、多数の文字が掲載されています。
お名前は複数の漢字で構成されているため、他の文字とのバランスを考えて最適な文字を選定します。

職人の一番のこだわりは文字。
どんな文字をチョイスし、どうんな風に表現するか。
つまりこの印稿デザインこそが職人の最大の個性です。
そのため構想に一番時間を必要とします。

 

2.筆で文字を書く

1.の文字の選定をもとに、やや大きめのサイズで文字を書きます。
印鑑は小さいため、最初にのびのび書くことで、窮屈にならないようにします。

黒い紙に白い胡粉で書くのは、見た目の良さで気分を上げるためでもあり、格式を高めるためでもあります。
ちょっとしたアレンジですが、これから印章制作向かうテンションを上げる重要な役割を担ってくれています。

 

②文字を書く

3.雁皮紙に縁取りを作る

2.の筆で書いた文字をもとに、原寸で書いていきます。

使用する紙は雁皮紙(がんぴし)と呼ばれる、トレーシングペーパーのようなもの。
印材によって微妙に大きさが異なるため、雁皮紙の下にカーボン紙を敷き、その上から押しつけて実寸を採ります。

 

4.縁取りに字割りの線を書く

3.で採った枠の縁取りの中に、文字を入れるための空間(字割り)の線を書き込んでいきます。
これは漢字の画数だったり、お苗字とお名前の文字数が違ったりする場合、それに応じて微妙に変えていきます。

 

5.字割りの線に鉛筆で下書き

雁皮紙に筆で文字を書き込んだ後は一切修正ができないため、まずは鉛筆で下書きをします。
鉛筆なら消せますし、また筆で文字を書く際のガイドラインにもなります。

 

6.墨入れ

いよいよ実際に筆で文字を書いていきます。
下書きをもとに、印稿に近づけるよう慎重かつ大胆に行います。

ちなみに転写することを想定し、墨はかなり濃いめにしています。

 

③印材を整える

7.面丁(めんてい)

天然素材が多い印材ですから、印面になる部分に歪みや凹みなどがあります。
そのまま彫ってしまうと綺麗に捺印できないため、徐々に細かい番手に変えて、印面を極限まで平らにしていきます。
この作業を丁寧に行うことで、軽く捺すだけで綺麗な捺印ができる、理想の印になります。

 

8.朱墨打ち

剥き出しの印面だと転写した際に墨が綺麗に乗らないため、下地として朱色の墨を打ちます。

④文字を逆さまに転写する

 

9.転写1

僅かなズレも許されないため、最も慎重に行う工程です。 ちなみに雁皮紙は水に濡れると張り付くため、位置が決まった箇所から水をつけて固定していきます。

 

10.転写2

雁皮紙は水分が乾燥する際の気化熱で転写できる特性があります。
そのためまずは水を印面に垂らします。
この水分量を間違えると墨が滲んでしまうので、素早く適量を。

次に乾燥を早めるため、上にテッシュを乗せて、上から擦ります。
強すぎると破れてしまい、かと言って弱いと熱が伝わらない。

そのためこの工程も、熟練の技が必要になってきます。

 

11.転写3

乾くと張り付き、転写できます。

すみません。 今回はちょっと失敗です、、、汗
まあ最終的に再度筆を入れていくのでよしとしましょう。

 

⑤荒彫り

12.荒彫

比較的地味な印章制作の中で、一番派手に見えるのがこの工程。
最終的に枠と文字ではない部分、つまり朱色の部分を全て彫ります。
最初に字割で書いた線をなぞるように彫ることで、文字の位置を正確に定め直しながら彫っていきます。

他よりも伸ばしたい線などは、この段階では彫らずに繋げておき、最終的にギリギリで切り落とす予定です。

 

⑥印材を整える

13.面丁

7.で面丁を行っていますが、ここでは仕上げの面丁です。
ほぼツルツルの細かい番手で、削ると言うよりは磨く感じです。

 

14.墨打

そのままでは仕上げる線が見えませんから、墨を打って見やすくします。
墨は湿度の影響を受けるため、雨の日はより乾きめに、晴れの日は濡れ気味に摺ります。

また濃すぎると仕上げの際にザクザクとした感触になって刃物の切れ味を落としてしまうため、指先の感触で最適な状態を常にキープしていきます。

⑦仕上げ

 

15.枠仕上げ

最初に枠の外側を削ります。
私の場合は速さと正確な外周を求めて、最初に雁皮紙で削り、後から刃物の背中部分を使って削っています。

外側を削って土手を作ることで、万が一の落下の際の耐久性を高めます。

 

16.内枠仕上げ

次に枠の内周を削っていきます。
印鑑は捺した際に枠が細いですが、手彫りの場合は外側と内側から削っているためなかり丈夫になります。

 

17.文字仕上げ

手彫りの最終工程、文字仕上げです。
荒彫りの段階では線がざっくりしていますので、削って整えてきます。
筆意を意識しながら、究極の切れ味を目指します。

ゆっくり彫ると切れ味が出ないため、できる限り一気に削る技術が問われます。

 

最後に

以上が手書き+手彫りの全行程になります。
ちなみにチタンなどの機械彫りの場合は、1をパソコンに取り込んでデータ化したものをもとに彫刻しています。

私たちは手彫りであることももちろんですが、それよりも大切なことは手書き文字を使うかどうかだと考えています。
なぜなら印章で最も大切なことは、唯一無二。
そのためには同じものが2つとしてできない、手書き文字からスタートするべきです。
逆に言うと例え機械彫りでも手書き文字を使えば、同じものができません。
複製防止という意味ではやはり「手書き+手彫り」が最強ですが、最も肝心なのは最初の設計図です。
なぜなら手書きには、誰にも真似できないレシピが全て備わっていますから。

以上が印章手彫り彫刻の全工程になります。
印章彫刻には様々な手法が存在しますが、鈴印では初代より受け継がれた上記の彫刻方法で、今でもお客様を思いながら1本1本彫り上げています。

 

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