今もしかして、ハンコの鞘(さや)と呼ばれる蓋が抜けなくなっていますか?
ここでは鞘が抜けなくなった時の応急処置をご紹介します。
無理やり抜こうとすると、鞘だけでなく印章本体まで破損してしまうのでご注意ください。
また抜いた後どうすればいいかまで網羅していますので、ぜひ最後までご覧ください。
鞘が抜けなくなった時の応急処置
大まかな流れを先にお伝えすると
冷やす→抜く→削る
の流れになります。
まず、鞘が抜けなくなる原因は温度です。
外気温などで印章が温まり、薄く削られている鞘は膨張しやすくきつくなるため、冷やすことで元に戻ります。
ただしその際に注意していただきたいのは、湿度です。
急激な温度と湿度の変化は、鞘のヒビ割れに繋がります。
そのため以下の順番で対処してください。
1.綺麗なタオルを水で濡らす
急激な乾燥を防ぐために、濡れタオルを使います。
タオルの汚れが印材に写る恐れがあるので、できるだけ綺麗なモノが良いです。
もしくはキッチンペーパーなどでも代用可能です。
水が垂れない程度の濡れ具合が理想です。
2.印章をタオルで包む
ここで濡れ具合にご注意いただきたいのは柘植などの木材です。
水牛や象牙などは水に強い成分ですが、柘植などの木材は水に弱いです。
ちなみに柘植も、印材は鞘の外側はニスなどでコーティングされていますが、印面や鞘の内側はむき出しになっているので、水気に弱いです。
そのため特に柘植の場合は、必要以上にタオルに水分を含ませるのではなく、しっとりする程度にしておいてください。
3.冷蔵庫に保管する
冷凍庫ではなく、冷蔵庫に入れてください。
急激すぎる温度変化は印章を痛めます。
なので冷蔵庫に5分〜30分ほど保管してください。
4.ゆっくり優しく引っ張る
冷蔵庫から出して、冷たい状態で構いません。
慎重にゆっくり引っ張ってみてください。
これで、スッと抜けます。
それでもダメな場合は冷やしが足りないので、もう1回冷蔵庫に5分ほど入れて、また試してください。
私の場合は、5分おきに出して抜けるか?を繰り返しています。
以上の方法で、ほとんどの鞘が抜けると思います。
抜けた後は内側を削って調整します
これで無事、鞘が取れたと思います。
応急処置は完了です。
無事捺印を済ませホッとしてひと段落。
でも問題はこの後ですね。
元通りキャップをしたら、また温度の変化で抜けなくなってしまいます。
この先の対応は、お時間が許せばお近くの専門店に預けた方がいいと思います。
なぜならこんな対処をしているからです。
そもそも一度キツくなった鞘はサイズが合わなくなっているので、削って調整する必要があります。
私たちがお預かりした場合、鞘を外した状態で一晩寝かせます。
翌日鞘の状態を見て、きつくなっている程度に応じて削ります。
使う道具は、印章を彫るための印刀。
これをひっくり返して削るんですね。
ただこの場合、一般のみなさんは印刀をお持ちでないと思います。
もちろん印章店でも印刀を持っていない場合も多々ありますので、実は専用の道具もあります。
印章の鞘削り専用ヘリカルカッター。
この先を鞘の中に突っ込んで削ります。
鞘の内側に入れてグリグリ回すだけで、面白いように削れます。
鉛筆削りを応用しているんですかね?
よくてきています。
一気に削ると逆にゆるゆるになってしまうので、少しづつ削っては様子を見て、また少し削っては・・・を繰り返します。
せっかくなので、印刀を使ったバージョンとヘリカルカッターを使ったバージョンの動画を撮りましたので、興味があればご覧ください。
どちらも結構難しいです。
印刀バージョンは、私も練習用の鞘が薄くなるなるほど練習しました。
ヘリカルカッターは、角度が上手く合わないと全く引っ掛からず、全く削れません。
まあ器用な方なら簡単かもしれませんが。
ただ残念ながらこのヘリカルカッター、現在ほぼ入手不可能。
需要がなくて生産中止で、ネットを探しても出てきません。
今回3個だけ独占入手!早いもの勝ち。
2023年5月13日現在は残り1点となっています。
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