困ったとき/印鑑で困ったときはここを見て

「私、ハンコ捺すのが苦手なんです」の原因はあなたじゃないんです。

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私、ハンコ捺すのが苦手なんです。

よく聞く言葉です。
この言葉を聞くたびに、ちょっとだけ歯がゆい思いをしています。
なぜなら、こうはっきり断言したいからです。

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ハンコを捺すのが苦手なのは、あなたのせいじゃない!

一方で鈴印のお客様からは、こんなお言葉をいただくことが多いです。

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びっくりしました。
先日こちらで作っていただいた印を捺したら、簡単に綺麗に捺せるんですよ。
ずっと苦手だったんですけど、原因はハンコだったんですね。

もうそのために仕事していると言ってもいいほど、嬉しい言葉でした。
では、この違いはなんなんでしょう?
今回はその理由について書いていきます。

ハンコが写らない原因は、経年変化か彫刻方法

「捺すのが苦手」って人の印を見せてもらうと、大体こんな感じです。
これじゃ誰が捺しても綺麗に写りませんし、無理やり写そうとすると手が痛くなっちゃいます。
ではなぜこんなことが起こるのでしょうか?
考えられる原因は2つです。

1.経年変化

上の画像は水牛です。
中央に凹みがあるのがわかりますでしょうか?
原因の1つはこれです。

水牛は経年変化で芯の部分が凹む特性があります。
購入した時は平らでも時間の経過で凹み、真ん中が写らなくなっちゃうんですね。
もちろん全てがこうなるわけではないんですが、運が悪かったり、また粗悪品だったりするとこういう傾向があります。
これは天然材の宿命で仕方ない部分もありますが、残念ながら直す方法はありませんので、その場合は作り替えをおすすめするしかなくなってしまいます。

 

上の画像は長く使った柘植です。
一部が欠けています。
これも原因の1つです。

柘植は朱肉の油が染みて脆くなり、欠けや摩滅が起こりやすい傾向があります。
もちろん都度朱肉を拭き取るなどして綺麗に保存されていれば長く使うことができますが、雑に扱うと脆くなり変形してしまいます。
傾向としては捺す人の癖、つまり右寄りに力が入る人は右側が摩滅したり欠けたりするようです。
こちらも水牛と同様に、作り替えるしかなくなってしまいます。

2.彫刻方法

正確には彫刻の工程にあります。
写りの良し悪しを決める一番重要な工程は印面を平らにすること。

また同じ画像を出しますが、水牛の凹みを防ぐ方法として一度完全に凹ませた状態まで寝かし、平らにすることで防げます。

一方で安価で手に入る印は、細かい工程をカットして納品します。
印材を寝かしておくにもコストがかかりますし、印面を平らにすることすらしないで彫ってしまう場合もあるようです。

一方で柘植は表面にざらつきがあります。
こちらも同様に印面を平らにする「面丁(めんてい)」という工程で解消します。
ちなみに比較は以下です。

全ての線がくっきり写っている右に対して、左は掠れが目立ちます。
これが印面の処理の違いなんですね。
こちらも残念ながら修正することができず、作り替えるようになってしまいます。

面丁は詳しくブログに書いてますので、気になった方はご覧ください。

 

ここまで書くとハンコが写らない原因は全て印章、つまりハンコ本体にあるように思えるかもしれませんが、実は他にも要因があります。
逆に言うと、よく写らなくて作り替えを検討される場合でも、先にこちらを確認してみてください。

ハンコを綺麗に捺すための要因は4つ

ハンコを綺麗に捺すのに、技術は必要ありません。
必要なのはちゃんとした道具を揃えるだけ。
道具さえ揃えば、あとは誰でも簡単に綺麗に押せます。

じゃあどんな道具を揃えれば良いのか?
印章を綺麗に押すための要因は4つです。

  1. マット
  2. 朱肉
  3. 印章

この4つが揃わないと、残念ながら1つでも欠けると綺麗に写りません。
なぜなら捺印とは、平らな面と平らな印章で紙を挟み朱肉を転写する作業だからです。
だから捺す面と印面それぞれの凸凹をなくすのが綺麗に捺印するコツ。
とまあ、言葉で言っても分かりにくいので、まずは動画でご説明しましょう。

わかりやすいように、かなり極端な比較をしてみました。

では以下で、さらに詳しく見ていきたいと思います。

分かりやすいよう、あえて左はダンボール、右はメモ帳に押しています。
条件を同じにするために、マットも朱肉も印章も全く同じものを使用し、紙だけを変えています。

想像するだけでなんとなくお分かりになると思いますが、凸凹の段ボールで綺麗に写るわけがありません。
やはり平らで柔らかい方が綺麗に捺せることは、まあ多分言わなくてもわかると思います。

自分で紙を用意することは少ないと思いますが、理想の紙は印箋で、細部まで鮮明に表現できるので、篆刻などで利用します。

なんとなくイメージをつかんでいただければと思い、ご紹介しておきます。

捺印マット

左は表面を意図的に凹凸させた黒桟革を下に敷き、右が鈴印オリジナルのBLマットを下に敷いています。
一応補足しておきますと、黒桟革は漆の特徴の乾固を利用して独特の雰囲気を醸し出した日本が世界に誇る革で、鈴印のキャッシュトレイにも使用しています。
BLマットは、正確な捺印のために栃木レザーの一番良い部分だけを贅沢に使用した捺印マットです。
条件を同じにするために、紙も朱肉も印章も全く同じものを使用し、マットだけを変えています。

綺麗な捺印のために必要な理想的なマットも上で書いた紙と同じく、表面が平らで、ややしっとりした柔らかい素材です。
マットの表面が凸凹していると、凸の頂点だけ写り、逆に凹の部分が写りません。
写真の比較ではそれほど大きな違いは感じられませんが、凸凹の黒桟革を下に敷いた方が、所々写りの悪い箇所が見受けられます。

一応BLマットの詳細もご紹介しておきますね。

朱肉

左が100円の朱肉で、右がこれまた自社のですみませんが鈴印朱肉。
条件を同じにするために、紙もマットも印章も全く同じものを使用し、朱肉だけを変えています。

今回の道具の中で、捺印の可否に最も大きな影響を与えるのは実は朱肉です。

理想の朱肉は、インクがしっとりとして色の濃いものです。
安く市販されているものは、元々のインクが乾き気味だったり、色が薄かったりして、捺印に適しているとは言い難いです。
100円で良いものもありますが、朱肉はちと厳しいです。

鈴印朱肉の詳細もご紹介しておきます。

4.印章の彫刻

前述した通りです。

最後に

以上が綺麗で簡単な捺印を可能にする条件です。

簡単にまとめると、まずは朱肉を変えて、それでもダメなら印章つまりハンコ本体を変えてください。
その効果は想像以上だと教えてくれたのもお客様でした。

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作り替えるだけでこんなに楽で簡単になるんなら、もっと早く作っておけばよかった。
だって捺すのが楽しくて仕方ないですもん。

 

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