印鑑制度編/日本での印鑑の役割

連帯保証人にならない方法

ここでは、捺印の中でも最も避けたい「連帯保証人にならない方法」についてお伝えします。

そもそも連帯保証人とは、本来は他人が支払うべき費用を、すべて自分が肩代わりするという恐ろしい契約です。
本当に、なぜそんな怖い契約が存在するのか?と思うかもしれませんが、貸主側の立場で考えると仕方のない一面もあるのかもしれません。
とはいえ、捺さなければ済む話。
簡単なようで、実際にはなかなか難しいのが現実です。

連帯保証人にならない方法は、自分一人で決断しないこと

シンプルですが、最も確実な方法は「自分一人で決断しないこと」です。
捺す前に、配偶者やご両親に相談すること。
まずはこのことをしっかりと覚えておいてください。

連帯保証人の依頼は突然やってくることが多く、即断を迫られるため、冷静な判断が難しくなります。
だからこそ、一人で判断しないことが重要です。

連帯保証人の捺印はとても危険です

連帯保証人には、絶対に捺印しないでください。

そもそも連帯保証人とは、

債務者が金銭を返済しない場合に、債務者に代わって借金を返済することを約束した人が保証人で、保証人に与えられる催告・検索の抗弁権を排除された人のこと

つまり通常の保証人とは異なり、連帯保証人は借主とまったく同じ責任を負うことになります。
もし本人が行方不明になれば、自分が借金を背負うことになるのです。
だからこそ、絶対に捺してはいけません。

とはいえ、断るのは簡単ではありません。
なぜそうなってしまうのか、次でお話しします。

連帯保証人を断るのが難しい理由

連帯保証人の依頼は、突然訪れます。
しかも多くの場合、依頼してくるのはあなたの身近な友人や知人です。
まったくの他人に頼んでも断られるに決まっていますからね。
「どうか助けてくれ」と、必死にすがってくるのです。
だからこそ、断りづらいのです。

私の父も、かつてよくそうした依頼を受けていました。以下にそのときの様子を紹介します。

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ある日、突然の出来事がありました。
私も幼い頃からよく知る、父の旧友が久しぶりに来店。
「おう!久しぶり!」と笑顔で右手を挙げたものの、どうも様子がおかしい。
いつもは冗談交じりに父をいじっていたその人が、まるで別人のように、必死の形相で深々と頭を下げ、父に何かを頼み込み始めたのです。

その異様な雰囲気は言葉にできないほど。
とにかく、異様なほどの迫力でした。
どんなに父が言葉を返しても、まったく耳を貸さない様子。

よくよく聞いていると、連帯保証人の捺印をお願いしていることがわかりました。

「どうするんだろう?」
私は内心ハラハラしながら、そのやりとりを聞いていました。
父は以前から、お客様にも私にも「連帯保証人にはなるな」と繰り返し言っていたので、「今回は断るだろう」と思いながら。

[speech_bubble type=”ln” subtype=”L1″ name=”親父”]俺ははんこ屋だから実印の怖さを知ってるんだよ。
いつもお客様に「実印は自分だけの判断で捺さないで」って言ってる。
だから悪いけど今回も、家族と相談してから結論を出すよ。[/speech_bubble]

[speech_bubble type=”ln” subtype=”R1″ name=”友人”]そんな悠長なこと言ってられない・・・[/speech_bubble]

そう言い残し、その方は去って行きました。

家族に相談するメリット

家族に相談すること。
先ほどの父の言葉の通り、これはとても理にかなった方法です。

想像してみてください。
自分の家族から「いま〇〇に連帯保証人の実印を捺してほしいって言われてるんだけど、どう思う?」と電話がかかってきたとしたら…。
きっとあなたは「やめた方がいい」と止めるはずです。

つまり、自分の判断に大きな影響を与える第三者に相談することで、冷静な判断ができるのです。

また、連帯保証人を頼む相手にとっても、「家族全員を巻き込むことになる」と想像してもらえれば、それが抑止力になるかもしれません。

最後に

印鑑を捺すという行為。
多くの場面では、自分の意思で捺すというよりも、「相手に言われたから捺す」ことの方が多いかもしれません。
なぜ印鑑が求められるのか? それは契約書など文書の証拠能力を高めるためです。

特に実印は、高額な契約に使われるため、後から「聞いていない」「そんなことは言っていない」と言い逃れできないように、契約相手が求めるのです。
つまり「ここに実印がある=あなたが同意した」という証拠。

実印を捺すこと=大きな責任が発生する

たとえば家や車の購入など、夢や目標のために捺す実印は、晴れやかな決意の印。
しかし、突然降って湧いたように持ち込まれる「連帯保証人の実印」は、まったく性質が違います。
どうか、本当に注意してください。

鈴印では「実印は親から子への贈り物」としていますが、それはこのような危険から子どもを守るという意味も含まれています。
親からもらった実印を見れば、その瞬間に親の顔を思い出すはずです。

大切なのは「印鑑を捺す」という行為が、自分自身の未来を左右する可能性があるという意識を持つことです。
特に実印を求められた場面では、一度立ち止まり、信頼できる人に相談する習慣を持つだけで、防げるリスクは大きく減ります。
あなたの大切な人生を守るためにも、「印鑑を捺す前に考える」ことを、どうか忘れないでください。

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