印鑑制度編/日本での印鑑の役割

シヤチハタ不可の理由

ここでは書類などで見られる「シヤチハタ不可」の理由について解説します。

持参品に「印鑑(シヤチハタ不可)」の文言をご覧になった方も多いと思いますが、その理由までは明記されていません。
ネットでも憶測の回答が多々見られますが、多くは的を外れているようです。
そのため一般的であろう回答をもとにご紹介してきたいと思います。

なぜシヤチハタは不可なのか?

 

そもそもシヤチハタとは

まずシヤチハタについて正しく理解しておかないと、不可の理由がわからなくなりますので、簡単にご説明しておきます。

誰でも見たことがある上記の商品を総称して「シヤチハタ」と認識している方が多いですし、また不可とされている資料もこちらを指していると思われます。
正確には画像の商品はXスタンパーのネーム印(シヤチハタ株式会社製)となります。
細かい指摘になりますが、このような印はさまざまなメーカーから発売されていて、総称して「浸透印」となり、「シヤチハタ」はメーカー名となっています。
例えるなら「SONY」の「WALKMAN」や、「Apple」の「iPhone」と同じで、製品名が有名になりすぎて、類似品も同じ名前で呼ばれる現象ですね。

そして構造に関しては「朱肉内蔵型ゴム印」になります。
通常の印鑑は朱肉をつけて捺すものになりますが、(総称)シヤチハタは、朱肉をつけずに連続捺印できる簡易型の印。

補足ですが、「印鑑」を正確に表すと「実印や銀行印など登録した印章の印影のこと(印章の真偽を見極めるためのもの)」となります。
つまりシヤチハタは印鑑ではなくゴム印ということになります。

 

シヤチハタ不可の理由

では次に、サイトなどでよく見かける理由について、個別に解説してきます。

1.同型の大量生産印のため本人認証が難しいから?
2.インクが薄くなったり滲んだりするから?
3.ゴム印なので劣化するため、長期に渡っての認証が難しいから?

同型の大量生産印のため本人認証が難しいから?

確かに既製品に関しては同じ型を使って作成しているため、同じ印影を見かけます。
ただしシヤチハタでは定期的に文字を若干変えて作っているため、永続的に同型ではありません。
また既製印にある名前、例えば「鈴木」でも別注でつくる場合もあり、それは同一書体でも既製印とは異なっています。

一方で同型印が不可の理由なのであれば、既成の認印(三文判等)も広く出回っているため、根拠としては弱いことがわかります。
 

2.インクが薄くなったり滲んだりするから?

シヤチハタネーム印が発売された、昭和40年代頃はその現象がみられました。
当時はインクが染料系でしたが、現在は油性顔料系を使用しているため、消えてしまう事はありません。
ちなみにメーカー保証としましては、日陰で保管していれば20年は印影は残ります。

つまり、かなり古いデータを根拠とされていることがわかります。

 

3.ゴム印なので劣化するため、長期に渡っての認証が難しいから?

ゴム印は柔らかいため、時間の経過と共に変形します。

見本はゴム印で、約10年程度の使用期間ですが、細かい文字になるとここまで摩滅が進みます。
印鑑に使われる硬質の木や水牛や象牙などと比べると、劣化は著しいです。

つまりシヤチハタ不可と言われる一番の理由は変形しやすいからというのが一番の根拠であることがなんとなく見えてきます。

 

総評

ここまで見て感じるのは、シヤチハタ不可って根拠が弱いってことでしょうか。
登録印に変形が問題なのは理解できますが、登録していない認印にまで耐久性を求める理由もよくわかりません。
つまり印鑑登録でNGとされているからなんとなく、な程度のルールのように感じます。
その極論が押印廃止って流れになっているような気がします。
「じゃあ全部なくしてしまおう」

いずれにしても捺印の根拠は法的価値です。
書類を求める側が責任を負わないで済むよう、ユーザー側にサインよりも価値の高い捺印を求めていたわけです。
印の種類が多様化した今、1人1本しか認印を持っていない訳でもなく、結局形骸化していただけのように思います。

ということは極端に言ってしまえば、シヤチハタ不可=サインも不可と考えてもいいように思うのですが。
逆に言うと、サインで良いのであればシヤチハタでも良い。
この辺は今はあやふやになっています。

※シヤチハタも認印もサインも、どこにも登録されていません

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