書体編/書体の違いを知ろう

複雑な文字の方が偽造しにくい?

日々お客様からお話を伺っていると、さまざまな疑問があることがわかってきます。
ここではその中の、文字の複雑さと偽造のしやすさ、に絞って解説します。

 

複雑な文字の方が偽造しにくい?

写真右側の印影はどちらも「鈴木延之」となっています。
上は複雑で読みにくく、下は読みやすいですよね。

結論から申し上げますと、偽造のしやすさではどちらも変わりません。

理由として極端に言えば、どれほど複雑な文字でもコピーはできますし、どれほど読みやすくてもコピーは難しいとも言えるからです。
では次にもう少し細かく見てきたいと思います。

 

偽造のしやすさは、文字デザインよりも製作方法による

印影からの偽造は、書体を問わずかなり難しい

先ほど申し上げたコピー、いわゆる偽造ですが、これは時間をかけて緻密に彫り上げれば、どんな印でも私たちプロの職人は作ることができます。
印影をもとに、全ての線を手作業で合わせていくかなり緻密な作業ですので、はっきり言ってやりたくもありません。
もちろん技術的に可能でも、法律で禁止されているため、実際に行ったことはありません。
つまりどんな印影であろうが、コピーに関してはあまり関係がないんですね。

また最近ではスキャンしてコピーできるなんて情報もまことしやかに囁かれていますが、それが可能だとしても文字の複雑さは関係なくなります。
こちらも正確には、捺印→スキャン→データ化との過程で微妙にピクセルが太っていきますので、大元とは線の太さが異なり同一にはなりません。
他にも3Dプリンタで作れるなんて話もありますが、こちらも現時点での3Dプリンタの解像度では、あれだけ細かい印影を再現することは不可能です。

つまり印影をもとに何か偽造などをしようとしても、物理的に難しいことになります。

 

偽造されるというより、同じものを用意される

ここからが本題になります。

偽造というと一見、同じようにコピーされると思いがちですが、弁護士の話によるとそのほとんどは、実は既製印を使われているとのこと。
つまり大量に流通する市販されている印と同じのを探して利用されているだけだそうです。

また一方で見落としがちなのが、オーダー品でも同じものができてしまうパターン。
今では安価に手に入るオーダー品も増えてきていますが、それらはPCフォントを利用して、機械で彫っている場合が多いです。
フォントはそもそも量産するために開発されているものですから、全く同じものを作れます。
また彫刻機も正確ですから、フォント+彫刻機の組み合わせでは、上記の市販品とほとんど違いがないことになります。

もう少し専門的な話をしますと、上記以外にもフォント+手仕上げという手法もあります。
これはフォントを使用して最後に手で仕上げるとうたっていますが、実際には文字には触らず枠を削っているだけのようです。
根拠はこれまで不安になって私たちのところにご相談に訪れた方がお持ちの印です。

 

偽造しにくいのは、手書き+手彫り

ここまでで一番肝心なのは最初の出力、つまり文字がフォントなのかどうかが重要であることがお分かりいただけたかと思います。

そして量産できないのは手書きの文字です。
みなさんが全く同じサインを繰り返し書けないように、私たちも書けません。
そのため例え同じ書体であっても、複製は不可能なんですね。

またそこに手彫りという、言い方を変えると不正確なものが組み合わさることで、完全に唯一無二が誕生します。
意外かもしれませんが、仮に手書き文字を彫刻機で彫っても同じものが作れないのも、何となくご理解いただけるのではないでしょうか。
最初の出力が、複製できないものだからです。

 

最後に

印鑑に求められる最大の使命は、唯一無二であることです。
そのために必要な製法は、手書き文字+手彫りということになります。
そして最低限必要なのが手書き文字。

色々な機械が発達し便利になってきていますが、アナログ界最強の認証ツールである印章だけは、手間暇かけた手作りが最も安心です。
なのでもし偽造が不安で書体が選べないのであれば、手書きかどうかの確認をされるといいですね。
手書きであれば、お好みの書体でも全く問題ありません。

長いおつきあいになる印章ですから、上記の点を踏まえ、気に入った書体をぜひお選びください。

 

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