ここでは、印章の最高峰「象牙」の品質の見極め方を解説します。
象牙は天然材のため、ランクによって、また店舗によっても取扱品質が様々です。
お肉に置き換えると分かりやすいでしょうか?
難しく思える品質の違いですが、実は見分け方は非常にシンプルです。
私たちもまずは見た目と触感で判断していますので、そのノウハウを理解することで、誰でも簡単に見分けることができるようになります。
象牙の全体像から抽出箇所へ、またそれぞれの見た目・触り心地・彫り心地・捺し心地までご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
ここさえ読めば、実際に色々なお店で手に取った瞬間に、どのレベルなのかを理解できるようになるはずです。
象牙の品質の見分け方
こちらが象の牙、いわゆる象牙です。
まずは象牙がどのように細分化されていくのか、全体像をご覧ください。
象牙はそのほとんどが印材になります。
また取り方によって名称が違ってきますが、今回はランクの見分け方になりますので、詳細は別の機会に委ねます。
では次に、象牙を横から見た輪切りをご覧ください。
黒丸のマーカーがありますが、その形で切り出していきます。
まず単純計算で、外側は数が取れ、中心に近づくほど希少になっていくのが分かります。
では次に拡大して見ていきましょう。
このくらい拡大すると、細かい模様(キメ)が見えてきます。
外側の方がキメが荒く、中心にいくほど細かくなるのが分かります。
つまりこの「キメ」の細かさによって品質が決まるため、中心に近づくほど良品となります。
また中心にある空洞は、神経の後です。
人間の歯と同じ象牙ですから、真ん中には神経が通っていたため空洞になっています。
また芯持材と呼ばれる象牙もありますが、これは牙の先端にいくほどに空洞が小さくなって埋まります。
芯持ち材は全ての牙から取れるわけではなく、さらに希少性が高まっていきます。
では再度上部の画像を見ると、また違った側面が見えてきます。
右下にひび割れが見えます。
これは経年変化の一種ですが、外側は目が荒いため乾燥や気温の変化で割れてしまう恐れがあります。
では再度、左上の黒丸マーカーに目を移していただきますと、全部で6個。
これを外側から、並・中・上・上上・特上・極上と呼んでいます。
ちなみに鈴印では、並材はひび割れの恐れが高いため取り扱っていません。
ではこれからは、実際の印材でみていきましょう。
象牙のランクごとの違い
粗悪材
極端な例を示すために特別に入手した並材以下の、非常に粗悪な象牙です。
- 見た目
- 触った感触
- 捺し心地
キメが荒すぎてヒビ割れを起こしています。
ボコボコとかなりざらつき、またヒビの部分は爪が引っかかります。
象牙とは思えないほど悪いです。キメが荒いためどれほど丁寧に仕上げても、ザラ付いた印影になってしまいます。
中材
ここからが実際に鈴印で取り扱っている象牙、5番目の「中材」になります。
- 見た目
- 触った感触
- 捺し心地
格子柄の綺麗なキメが見えます。象牙のキメは全て均一ではなく、切り出す箇所によってツートンでつなぎ目のように見えて心配なため、全てが均一な象牙が良品となります。
キメの凹凸が多少指先に感じる程度。
象牙ならではの吸い付くような感触が感じられます。
上上材
こちらは1つ飛んで真ん中の「上上材」。
象牙のランクとしては、ここから一気に希少価値が高まり、鈴印としてもイチオシのグレードになります。
ちなみに1つ下の「上材」を飛ばしましたが、中間くらい(やや中材寄り)とご判断ください。
- 見た目
- 触った感触
- 捺し心地
このランクになると、よく見ないとキメが分からないほど滑らかになります。
指への吸い付き感が感じられ、触れるほどに高級感を味わえます。実際に店頭では、この上上材の後に中材に触れると「どことなくプラスチック感に感じる」とみなさん口を揃えるほど
まさに絶品です。軽く捺してもピタッと気持ちよく写るため、一度使うと他はもう扱えないとまで言う方も。
極上材
また1つ飛んで、最高峰の「極上材」です。
ちなみに1つ下の「特上材」を飛ばしましたが、中間くらい(やや極上材寄り)とご判断ください。
- 見た目
- 触った感触
- 捺し心地
キメが全く見えず、透き通るかのように、綺麗できめ細やかです。
よく人肌のキメ細かさを「赤ちゃんの肌」に例えますが、まさにその通りで絶品です。
極上ののネーミングはこの捺し心地かと思うほど絶品で、これ以上はありません。
現在ここまで綺麗な象牙はかなり入手困難になっています。
そしてそのクラスがいまだに店頭に残っているのも長年の実績になります。
最後に
象牙の品質の見分け方に絞ってご紹介してきました。
ただし象牙の品質は奥深い部分もあって、そもそもハード材とソフト材に大きく分かれる特徴もあります。
ハード材は硬くて希少価値が高く、またソフト材は柔らかくて流通量も多い。
ちなみに鈴印での取り扱いは全てハード材ですが、その違いはまた追ってご紹介していきます。
私たちが象牙を仕入れる際、まずは見た目で選定します。
次に触覚、つまり触ってさらに選別します。
冒頭で述べました通り、この見た目や触り心地は、どなたでもはっきりと分かります。
なので象牙を店頭で触れる機会があれば、ぜひその辺りに注目していただけるとよろしいかと思います。
見た目だけでなく、触れた時の感触は想像以上に違いがありますから。
本当に良いモノは、あなたの目と指先が教えてくれます。
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