書体編/書体の違いを知ろう

印鑑の書体の選び方

印鑑を作りに当たって、大きなポイントになるのは印材の選定と、書体です。
またそれらはあなたの個性、価値観、さらには歴史や文化を象徴することになるため非常に重要です。
そのためここでは、印鑑の書体が持つ独特の魅力と、あなたにぴったりの書体を選ぶ方法を紹介します。

書体とルーツ

まずはじめに、なぜ印鑑に複雑な文字が使われているか?
それを理解するためには、印章の歴史を紐解く必要があります。

印章の使用は、古代メソポタミアまで遡り、その形状やデザインは長い歴史を通じて進化してきました。
書体においては、真の始皇帝が象形文字を篆書として統一した歴史が現代に続きます。
また印相体は篆書の意匠である点など、今日私たちが使用する書体には、深い歴史的背景があります。
これらの書体は単なる文字というより、古代の知恵と現代の美学が融合したアートワークなのです。

印鑑の書体の種類は7書体

現在、印鑑に使われている書体を、文字ができた歴史順に並べると以下の7書体になります。

篆書体・隷書体・草書体・楷書体・行書体・古印体・印相体

書体によって印鑑の雰囲気は大きく異なり、また作り手によって考え方や好みも異なるため、サイトによってオススメが違っています。
そのためここでは、人気に傾向順にご紹介していきます。

印相体

複雑で重みがあり、実印や銀行印の書体で今一番人気なのが印相体

■特徴
後述する篆書をもとに、線を曲げて伸ばして文字同士や枠に付け、別名吉相体などと呼ばれる印相体。
四角の空間がないから印自体も大きく見え、最も堂々とした雰囲気を醸し出しています。
「縁起が良いから」「隙間がないから」などの理由で、近年もっとも人気の高い書体となっています。

歴史的には印鑑に使われる文字の中で最も新しく、昭和30〜40年頃に登場しはじめたとされています。
その際に新聞広告等で「印鑑にも相があり、八方に運気が広がる縁起の良い書体」と一気に広まり、それまで主流であった細くスッキリした篆書体から、太くどっしりした印相体がトレンドになっていきました。

様々な流派があり、それぞれにアレンジを加えているため、辞書などで一元化はされていない。
そのような歴史的背景を持つため自由度が高く、個性が出しやすい書体でもあります。
デザインの性質上どんなお名前でもアレンジできるため、実印や銀行印の書体で迷ったら印相体、そんな判断でも良いかもしれません。
またひらがなやカタカタの場合は、特に相性が良いです。

篆書体

凛とした高級感があり、実印や銀行印の書体で最も歴史があるのが篆書体

■特徴
実印として一番歴史が古く、スタンダードと言っても過言ではない書体です。
適度に角が張っていて力強く文字同士の空間があるため、バランス良く配置されると限られた空間の中で最も美しく表現することができます。
ある程度判読も可能なため、全ての書体の中で、一番バランスが良いのが篆書です。

その価値は日本銀行券、いわゆるお札にも押してあることからも分かります。
ちなみにお札の表には「総裁之印」裏には「発券局長之印」と彫ってあり、江戸後期の篆刻家「益田香遠(ますだこうえん)」が手掛けました。

秦の始皇帝が甲骨文字や金文を統一して完成させたのが篆書です。
正確には「印篆(いんてん)」と呼ばれる印鑑用の篆書で、それらを含めて正しくは「小篆」となります。

古印体

読みやすいのに重厚感があるため、認印に人気なのが古印体

■特徴
後述する隷書をもとに線を枠に付け、印鑑専用として独自の発展を遂げたのが古印体です。
丸みがあるのに重みを感じられるのは、隷書がベースにありつつ、枠に文字が付いているから。
また線に適度に凹凸があるため、読みやすさと趣が共存しています。

歴史的には、石や金属に彫られた文字が破損や腐食によって風化され、削れたり埋まってりしているものをルーツとします。
最近では既製印などにも多く使われますが、本来はそれをは一線を画す格調高い雰囲気があります。
古印体の魅力を最大限に引き出すためには欠けや墨溜まりを表現する必要があり、やり過ぎるとおどろおどろしく、足りないと面白みにかける難しさを併せ持ちます。
大和古印などと呼ばれることもある、日本独自の進化を遂げた風雅のある書体です。

隷書体

人とちょっと違う認印などに人気の隷書体

■特徴
「波磔(はたく)」と呼ばれる主役の線がある筆法です。
文字内で強調された波磔だけでなく、横線が太く縦線が細いなどの強弱があり、独特のリズムと動きが感じられます。
横広の文字で、枠に付けずに彫るルールがあるため、縦の配置によって最も特徴が表現できます。

文字の歴史としては、篆書の次に古く、複雑だった篆書の簡略化を目的としています。

隷書も篆書同様、お札の「金額」や「日本銀行券」の文字に使われいる由緒正しい文字。
横幅が広い特徴から安定感があり、安定をイメージする銀行などのサインには隷書が多く使われています。
残念ながらフォントで美しい文字がないため、手書き文字+手彫りでしか対応するのが難しい書体でもあります。

草書体

最も柔らかい雰囲気のため、昔から女性の銀行印や認印に人気

■特徴
文字によっては篆書よりも複雑になるのが草書。
枠に付けずに細く柔らかい線で構成されるため、小ぶりで上品な雰囲気。
その特徴から、特に女性に人気の書体です。

一般的に漢字の成り立ちは、楷書→行書→草書だと思われていますが、実は違います。
草書は隷書の簡略化を目的としましたが、略しすぎて読めなくなりました。
そのため改めて隷書を元にして行書や楷書が生まれたため、漢字の成り立ちとしては独特の立ち位置にいます。
ちなみにひらがなは草書が元となっているため、日本においては重要な役割を担っています。

行書

■特徴
一点一画繋がるような流れが見える上、草書よりも読みやすい。
早く書けるように設計されているため、速度感によって文字に流麗さや動きを与えてくれます。
読みやすさを重視しつつ、印鑑らしさを損なわない、こちらも女性に人気の書体です。

行書は「行う」という文字が示すように、速写に適した流れる特性を持ち、実用的な美しさがあります。
上から筆を離さず書くため、省略や変形を伴い、文字によっては楷書とは全く印象を与えてくれます。
また上記の理由から、書き手によって異なる風格や味わいを生み出すことができます。

楷書

■特徴
当然ですが、識字率が最も優れているのが楷書です。
一点一画を正しく配置する現代漢字の基本となり、綺麗に収まった際の仕上がりは絶妙です。
一方で印鑑はサイズが小さいため、やや面白みに欠けるといった意見も多く見られます。

楷書の筆画は非常に明確で、各筆画の開始と終了がはっきりしているため、文字の構造がはっきりし最も読みやすい書体です。
筆画が角張っていて直線的な筆使いをし、筆画の始めと終わりにはっきりとした「止め」を入れることが求められます。
楷書は書体の中でも特にバランスが重視され、サイズ感や空間の空き具合だけでなく、筆画の配置などが高いレベルで求められます。

鈴印で選べる他書体

ここまでで一般的にお選びいただける書体について解説してきました。
では次に、鈴印で選べるオリジナル書体、2書体をご紹介します。

小篆体

他にはない独特な柔らかい雰囲気で、お名前の印に非常に人気

■特徴
書画の最後に捺す落款印などにも使われる書体のため、とにかく美しくて流麗。
文字として認識することもできるのに、高貴で上品さを感じさせるのは、漢字の起源であることも無関係ではないでしょう。
他にはない美しい佇まいは、自分の名前の魅力をさらに引き出してくれるものです。

こちらは鈴印オリジナル書体です。
落款印をモチーフに、独自の解釈で登録印にも使えるようにした、他では見ることの出来ない文字です。。

小篆(しょうてん)という書体は、秦の始皇帝が宰相李斯に命じて定めた漢字の紀元の文字で、ここでは最も古い文字です。
職人の世界では競技会などで使われる由緒正しき文字にも関わらず、あまり一般的でないのは彫刻に困難を極めるから。
それを実用印として1990年頃から提供し始めたのは先代、鈴木晴夫。
きっかけはお客様の声で「女の子なので、しなやかに女性らしく柔らかい書体で」というご要望だったそうです。
落款に使用される小篆をアレンジすることで、登録印としての重みと柔らかさを併せ持つ雰囲気を完成させました。

※繊細な文字の特性状、機械彫りのチタン印は、フルネームに対応しておりません

SK印相体

完全鈴印オリジナル書体で、あらゆる場面でスタイリッシュにご使用いただけます

■特徴
直線のみで構成されたSK印相体は、これまでの印鑑のイメージを覆す画期的な幾何学模様です。
現在はSK印相体だけでなく、角の取れたSK印相体Ⅱ・細字のSKⅢとラインナップを増やしています。
いずれも実印として印鑑登録できる点も、SK印相体の強みです。

こちらも鈴印オリジナル書体です。
印相体をモチーフに直線で構成し、登録印にも使える、最もスタイリッシュな文字。

他では作れないグラフィカルな書体を求める方にご好評いただいているSK印相体。
株式会社カケラデザイン様と共同開発により、スタイリッシュなだけでなく登録印としても使用できる点が最大の特徴です。
これまでの印鑑にはない直線的な構成でありながらも、ベースは鈴印の印相体を使用しているため登録印としても使えるようにしました。

書体の選択に迷ったら・・・

これだけ種類が多い書体ですので、当然悩まれる場合もあることでしょう。
そのためにこれまでお寄せいただいた中から特に多いご質問をご紹介します。

印相体か篆書体のどっちがいいんだろう?

見た目の第一印象でお選びください

☑️デザイン性が高い雰囲気が好き=印相体
☑️クラシカルな雰囲気が好き=篆書体

印相体とSK印相体のどっちがいいんだろう?

素材との相性でお選びください

☑️手彫りがいい=印相体
☑️チタンがいい=篆書体

SK印相体の種類が多くて選べない

一番人気はSK印相体Ⅱです

☑️幾何学模様が好き=SK印相体
☑️中でも印鑑らしいのがいい=SK印相体Ⅱ
☑️グラフィカルな雰囲気がいい=SK印相体Ⅲ

自分の名前はどの書体と相性がいいんだろう?

ご注文の際に「おまかせ」をお選びください。最適なイメージをお送りさせていただきます。

どれを選んだらいいのかわからない

ご注文の際に「おまかせ」をお選びください。最適なイメージをお送りさせていただきます。

「書体おまかせ」をお選びいただいた際のお願い

もしイメージされていること「堂々とした」「優しい雰囲気」「おしゃれな文字」などがあれば、ぜひ私たちにお聞かせください。
より最適な文字デザインに近づけることができます。
もちろんそれも含めておまかせの場合は、文字から伝わるイメージを大切にデザインしていきますのでご安心ください。

最後に

最後まで読んでいただき、ありがとうございます。

印鑑の世界は歴史の分だけ奥深く、一つひとつの選択が大きな意味を持ちます。
書体は単に名前を彫るだけでなく、あなたの個性や価値観、さらには歴史や文化までをも表現することができます。
だからこそ選んでいる時間は、あなた自身の探求とも言えるのかもしれません。

このページがあなたが自分だけの印鑑を選ぶ際の一助となれば幸いです。
もしこの情報だけでは決めかねるという場合は、私たちが直接お手伝いをさせていただきます。
お問い合わせいただければ、あなたのニーズに合った書体や素材をご提案し、あなたにとって最適な一本を見つけるお手伝いをいたします。
鈴印ではオンライン相談で実際に目の前でラフを書くサービスもご用意していますので、併せてご活用ください。

あなたの人生の大切な瞬間に寄り添う印鑑です。
希望溢れる未来を想像しながら、ぜひ楽しんでお選びください。

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