ここでは、印鑑の書体でも人気の「篆書体(てんしょたい)」と「印相体(いんそうたい)」の違いについて解説します。
どちらも一見複雑で読みにくく実印に適しているように思えますが、実は両者には大きな違いがあります。
その違いと共に、私たちが文字デザインをする際に目安にしていること、また選び方までご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
読み終わればそれぞれの違いがわかり、作成する際にもイメージできるようになるはずです。
篆書体と印相体の違い
篆書体の特徴
歴史:漢字の書体の1つで、紀元前221年に秦の始皇帝の時代に、丞相李斯(りし)が創始したものといわれている。
デザイン:1文字づつ独立しているため、上下左右や文字間に空きができ、複雑だがある程度識字できる。
一般認識:お札にも捺してある、由緒正しい文字。
印相体の特徴
歴史:1970年頃、印鑑にも相があるとし、篆書を元に変形させたデザインとして誕生。
デザイン:篆書の線を伸ばし付けるため空きがなく複雑で、意匠化されているため判読が難しい。
一般認識:吉相体や八方体などなどとも言われ、縁起が良いと思われている方が多い。
実印の書体は格好がいい方が良い
大前提として彫刻師の私の意見を申し上げますと、格好がよければどちらでもよいと考えています。
こう言ってしまうと元も子もないような気がしますが、やはり文字の組み合わせに対して、最適な方がいいですよね。
お名前の組み合わせは様々です。
一番多い漢字4文字だけでなく、お苗字が4文字で名前が1文字、画数の多い少ない組み合わせや、カタカナひらがなが混ざったりと様々です。
当然その組み合わせによって最適な書体も変わってくるので、言い伝え云々よりもデザイン力、つまり格好がよい方が良いと考えます。
とはいえ格好のいいの判断は当然人それぞれですし「できればこっちの方が・・・」といったこだわりもあることでしょう。
例えば上記の「鈴木延之」という文字も統計上、約半々くらいに好みが分かれます。
そのため書体を選ぶ際にまず最初は、見本のどちらがパッと見た時に好みか?を感じてみてください。
デザインをする際に目安にしていること
では次に、私たちが文字デザインをする際、またご提案する際に意識していることをご説明します。
フルネームの場合
- 文字数が変則か
- 画数の多い少ないの組み合わせか
- カタカナひらがなが混じっているか
基本的にはどちらの書体でもバランスよく彫れますが、上記の場合は印相体をオススメすることが多いです。
つまり逆にいうと、バランスを重視するのであれば、漢字4文字以外は印相体が合わせやすいと考えています。
ただ鈴印では、先代までほぼ90%のお客様に篆書体をオススメしてきた実績もあるため、篆書体だからバランスが悪くなるということではありません。
まずは第一印象でお選びいただき、もし迷った場合は参考にしてください。
苗字orお名前のみの場合
こちらはまず大きく、以下で考えます。
- 縦がお好みなら印相体
- 横がお好みなら篆書体
お名前だけやお苗字だけの場合、比較的「縦か横」を最初から希望される方が多いです。
そのためまずは、そちらから。
そして元の文字でもある篆書は字形が縦長のため、横並び。
篆書の線を伸ばして繋げる印相体は、横にすると複雑になり過ぎる場合が多いので、縦をおすすめしています。
こちらも上記見本「延之」のように、それぞれに個性がありますので、お好みで選んでいただけば、あとはバランスをとっていきます。
篆書か印相体の選び方
ここまで文字に対して、私たちがどのように考えているかをご理解いただけたかと思います。
ただしあくまで傾向であって、実際の決定はご注文をいただいてからになります。
またどちらも普段見慣れない書体ですから、決定が難しいかもしれません。
そのため篆書体と印相体のどちらかで迷われた場合、最終的にみなさんの決定打になるご意見を記載します。
篆書体を選ぶ方
・昔から長く続いている書体がいい
・お札に捺してあるくらい権威のある書体がいい
・全く読めないよりも多少判読できた方がいい
・親と同じ書体
印相体を選ぶ方
・隙間なく彫ってある方がいい
・縁起が良い方がいい
・印鑑は複雑な方がいい
・親と同じ書体
最後に
今回は、書体のデザインの仕方から選び方までご紹介しました。
無限大の文字の組み合わせの中で、みなさまのお名前との共通項があったかと思います。
そこをご参考にお好みを、また親御様の印を参考にご覧いただく方も多いです。
それでも迷った場合、またもっと深く知りたい場合などは、オンライン相談で目の前で書く対応もしてますので、メールと併せてお気軽にお問い合わせください。
一生のおつきあいになる印章です。
あなただけの、ご納得のデザインが見つかりますように。
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