彫刻編/彫刻方法について知ろう

手彫りと機械彫りの簡単な見分け方

ここではみなさん気になる、手彫りと機械彫りの簡単な見分け方を解説します。

私たち印章彫刻士は、印面のいくつかを確認することで、手彫りか機械彫りかを見分けています。
そのノウハウを今回特別にご紹介します。
またそれぞれの彫刻する様子も併せてご紹介しますので、イメージしやすいかと思います。

もしご自身の印章がどちらか気になるのであれば、ぜひ参考にしてください。

 

手彫りと機械彫りの簡単な見分け方

左が手彫りで、右が機械彫り。
比較しやすいように、全く同じ直径で、どちらも同じく「鈴木延之」と彫刻しています。

最初に結論から申し上げます。

【手彫りと機械彫りの見分け方】
印面の底を見てください

次にそれぞれ拡大した画像で細かく見ていきます。

 

手彫りの底面

  1. 底が凸凹している
  2. 底と文字間の深さがほぼ同じ

機械彫りの底面

  1. 底が平ら
  2. 底と文字間の深さが異なる

他にもいろいろポイントはありますが、今回はまず底の部分だけを見てください。
比較的簡単に見分けられることがわかると思います。

では次に、なぜ手彫りと機械彫りで底が違ってくるのかを、彫刻方法と共にご説明します。

 

手彫りと機械彫りで底面が変わる理由

手彫りの彫刻方法

かなり前に違う目的で撮った動画ですが、30秒あたりからご覧ください。

底面が凸凹になる理由は、このようにゴリゴリと刃物の「面」で彫り込んでいくからです。

上記が彫り込むための刃物「印刀」ですが、広い部分は右の幅の広い印刀を使用します。
つまり幅=面で彫るため、「チリ目」と呼ばれる凹凸ができるんですね。

また底面の深さが均一な理由ですが、一言で言ってしまうと「均一に彫っているから」なんです。
同じ深さに彫ってある方が見た目も美しいですし、長く使っていて目詰まりがしにくい。
また文字デザインの段階で、部分的に窮屈にならないように文字間を広めに調整しているので、同じ深さで刃物が入ることになります。

印刀の種類が多いのは、幅が違うから。
彫る空間に応じて、幅広から薄歯までを使い分けて均等に、手彫りならではの証を刻んでいきます。

 

機械彫りの彫刻方法

その名の通り、彫刻機で彫っていきます。
鈴印でも三文判に限り機械彫りを行っていますので、まずはそちらの動画をご覧ください。

機械で彫る場合、歯医者さんのような先の尖ったピンを使って彫ります。
ピン先が回転し、移動して彫るため、均等な深さで平らになります。

深さに差が出るのは、ピンの太さと関係します。
ピン先は鉛筆のような形状ですから、狭い部分を同じ深さに彫ると文字が細く削れてしまいます。
そのため文字を削り込まないように浅く制御、つまり深さで太さを調整するため、このように段差ができるんですね。

最後に

今回は違いをわかりやすくするために、「手書き+手彫り」と、「PCフォント+機械彫り」という区分けでお話ししました。
厳密にはこの中間に「手仕上げ」という手法もあります。
手仕上げは「PCフォント+機械彫り」をした後に、刃物を使って削って整える彫り方です。
そのため手仕上げの場合でも、底面は機械彫りと同じく平らな場合も多いです。
聞くところによると、枠だけ刃物で削って「手仕上げ」としている場合も多いようですので、機械彫りとあまり差がないと考えてもいいような気もします。

印章は手彫りと機械彫りで、工程も仕上がりも全く異なります。
みなさんが一番気にされる「複製」という点でも手彫りの印はほぼ不可能ですし、「写り」も手彫りと機械彫りじゃ全く違う。

また複製が気になる場合は、彫刻方法ではなく文字デザインの方がより重要になります。
手仕上げや機械彫りなど、フォントを使っている場合は量産も簡単です。
そのため印章製作において最も大切なことは「手書きの文字を使う」ことになりますが、そちらは以下をご覧ください。

 

一般にあまり馴染みのないはんこを彫る世界。
でも知っているだけで、違いは結構簡単に見分けがつきます。
機会があればぜひ一度、画像と見比べながらご覧いただければと思います。

最後になりますが、他店様で作られた印章が手彫りか機械彫りかのご相談は、遠慮させていただきますこと、ご了承ください。

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