印鑑制度編/日本での印鑑の役割

領収書に朱肉で角印が押してある本当の理由

なんで領収書って、ハンコが捺してあるんだろう?
なんで領収書に、角印を捺さないといけないんだろう?
最近では公印省略なんて文書も見かけるようになったけど、それってどうなの?

領収書の店舗情報には、必ずと言っていいほど朱色のハンコが重ねて捺してあります。
なんとなく見よう見まねで捺している、って方も多いかもしれません。
実はここだけの話、私の場合は・・・「親父に言われたから」そんな理由からでした。

でも昔から続けられているコトに必ず理由があるんです。

 

領収書にハンコが捺してある理由は、偽造防止

こういう話は極端な方が分かりやすいので、そんな例えから。

飲食店でお得意様を接待して、会社の経費で落としてもらおうと領収書をもらってきたとします。
その領収書が、こんなのだったらどうでしょう?

当然、通用しませんね。
だってどのお店に10,000円を支払ったか分からないから。
これじゃ自分で領収書買ってきて後から捏造することだって出来ちゃいますし、経理も困る。
ちなみに店名のない領収書でも、任意団体だったら通る場合もあるけど、一般的な課税対象事業者はNGです。

そのためどのお店に、いくら支払ったか、が分かるように・・・
領収書を発行するお店側は、住所印と呼ばれるお店のゴム印を捺します。

ここまでよろしいでしょうか?
お店での飲食も契約ですから、きちんとお金のやり取りが分かるように領収書があり、宛名と店名の欄があるワケです。
じゃあここで当然疑問が湧きますよね?
「でも別に角印を捺す必要ないじゃん?」
でもちゃんとした理由があるんです。

角印を捺す理由は、偽造防止です。

一般的に住所印も含めゴム印ってPCフォントを使う場合が多いから、比較的簡単に同じモノが作れます。
もちろん完全な手彫りのゴム印や手書きのゴム印もありますが、今回その話は置いておきます。

つまりゴム印は比較的複製しやすいから、根拠が弱い。
そのため複製の作れない手彫り角印を重ねて捺して、領収書の真正を認知させています。
ゴム印を捺す代わりに、最初から店名を印刷をしている場合も多いですが、意味は一緒。

つまり角印を捺すことは
受け取った相手に対して、真正に発行された領収書であることを認知させる
という意味があったんですね。

ちなみに鈴印の場合は、誰が領収したかも分かるように、代金を受け取った担当者の認印も一緒に捺しています。

これによってこの領収書は鈴印から正式に発行し、誰が領収したかも分かるようにしています。
それにしても印がたくさん捺してあると、確かなものって感じるから不思議です。
多分これは、古文書などにたくさん印が捺してあった名残なのでしょう。

 

角印とは会社の認印である

たまに、丸印を捺してある領収書も見かけます。
これも法律上は全く問題ありません。
なぜなら領収書に捺す印章に、決まりはないからです。
相手から「実印を捺して」や「銀行の届出印を捺して」などの指定、つまり決まりがない場合は認印を押せばいい。

【参考】
印章の種類は、個人も法人も同じく「実印」「銀行印」「認印=角印」の3種類。
・「実印」=役所や法務局に登録している印章。
・「銀行印」=銀行に登録している印章。
・「認印」=実印と銀行印以外。
法人の場合は、認印として角印を利用します(丸印を別に用意している法人もあります)

 

法人の丸印と角印の使い分け

ついでなので使い分けもお伝えします。

大前提として、指定された時以外は認印=角印を捺すと覚えておいてください。
これは登録印の情報漏洩を防ぐためですね。

丸印は、実印や銀行印として登録している場合が多いです。
登録印はパスワードみたいなモノですから、むやみやたらに一般公開しない方が良い。
また実印・銀行印・認用丸印・認用角印と4本を揃えてる場合、認用の丸印を捺すことは問題ありませんが、もし実印・銀行印を丸印で兼用してる場合は、できるだけ丸印は捺さないでください。
※独自のルールで、請求書に丸印を求める場合もありますので、詳しくは契約先にご確認ください。

【丸印と角印の使い分けまとめ】
「実印を捺してください」と言われた場合のみ、実印を捺す。
「銀行印を捺してください」と言われた場合のみ、銀行印を捺す。
「それ以外」はどこにも登録していない認印(丸印・角印)を捺す。

 

公印省略の意味

最近では役所から届く際に、上記のような「公印省略」なんて文書も増えてきました。
これが押印廃止と言われた結果ではあります。
要するに役所が作成する文書に、やたらめったらハンコを捺すのはやめようと。
そもそもなぜ印を捺すのか?の根拠になっているのが、刑法159条1項、2項

2 他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。

つまり文書を偽造した場合の罪は、印が捺してある方が圧倒的に重くなります。
だから偽造されないように印を捺していました。
ところが法律改正で、必要性の低い押印については、原則求めないこととし、各種手続における全庁的な押印の省略・廃止となりました。
改めて公印省略となっている文書を見ると、約束を交わす契約書ではなく通達がほとんどです。
このような通達など一方通行の文書に関しては、公印省略になっているようです。
一方で当然ですが、契約の際に個人の意思の担保となる実印と銀行印は、継続することになりました。

これにあたって私の知るとある経済界の重鎮が警鐘を鳴らしています。

ハンコをなくすとは馬鹿げている。意味が分かってないんじゃないのか?

他にも面白いご意見をいただきました。

この間寄付のお願いって文書が届いたんですけど、公印省略ってなってるんですよ。
もちろん寄付も今回から省略させていただきましたよ。
だってそんな誰が作ったか分からない怪しい文書じゃ、本当に正しく寄付してくれるのかアテにならないですから。

つまり印が捺してある=真正文書って認識が一般的なんです。
そもそも登録していない認印を強制しても文書の真正とはあまり関係がなかったのですが、捺してあることで正しいという安心感に一役買っていたんですね。

 

最後に

いろいろ書いてきましたが、最後に簡単にまとめるとこういうこと。

角印=会社の認印

個人でも実印・銀行印・認印って、分けて使いますよね?
宅急便の受け取りに実印捺しませんよね?
会社も一緒です。
むしろ動く金額の大きい会社の印章ほど気をつける必要があります。

印章はお使いになるみなさんが明確に使い分けできるよう、それぞれに役割と名前が備わっています。
実印が必要な時のみ、印鑑登録している実印を捺す。
銀行印が必要な時のみ、銀行に登録している銀行印を捺す。
それ以外は認印として、角印を押す。

公的文書での角印が減っているようですが、それは国という後ろ盾があるから可能なのかもしれません。
私たち個人の会社などは、他の誰も守ってくれません。
請求書は重要文書ですよね?
偽造されたら困りますよね?
であれば、角印を1つ捺してください。
それだけで偽造もされにくく、かつ御社のブランディングにも寄与することになりますから。

今回のような知識は、いざという時にあなたを守ります。
印章は、あなたやあなたの会社を守るものでもあるのです。

実印は本人の意思を示すもの(意思の担保)

認印は本人ですと認めるもの(本人認証)

 

 

 

 

 

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