ここでは一般的に角印がどのように考えられているかを、具体的にご紹介していきたいと思います。
起業する際に一番分からないのが角印のようです。
法務局に登録する実印や、銀行に登録する銀行印と比べて、なんのために作るのかわからない部分が多いですから。
そのため角印の役割と共に、みなさんが捺してあることでどのように判断されているかまでをご紹介していきたいと思います。
角印の役割
まず角印の役割からご説明しますと
法人の角印=個人の認印
です。
ちなみに写真のように文字に重ねて捺すのがルールですが、その理由は後述します。
認印と同じですから、どこかに登録して印影を比較するものではなく、意思がそこにあることを伝えるものです。
ちなみに、印章を捺すこと=この書類の内容を認めたという意思を示すこと
です。
個人の認印は、相手が発行した文書の内容を認めたという使い方になりますが、法人の場合は自社で文書を発行します。
そのため角印は「この文書は間違いなく自社が発行したもの」を表す印になるんですね。
ではなぜ角印を捺すことで真正を表せるのかと言いますと、前述の重ねて捺すことと関係します。
紙で発行される請求書や領収書は、自社の情報(社名や住所)を載せる必要があるので、事前に印刷したり、規格のものを買ってきてゴム印を捺すなどして対応します。
印刷もゴム印もパソコンフォントを利用して作るものがほとんどですから、簡単にコピーできてしまうんですね。
そのため手彫りで複製のできない角印を捺すことで、真正を表しています。
さらに詳しく知りたい方は、以下をご覧ください。
日本人であれば感じられる「印鑑が捺してある安心感」
これは決して思い込みではなく、上記のような長い歴史が証明しています。
ちなみにこれまでの実績では、角印が捺していないと請求書が経理を通らない企業もあります。
これも正しく発行されていないものは支払えないとの規則からですね。
またちょっと前には押印廃止などで、さも印鑑が不要のようなニュースもありましたが、あくまで不要な印鑑は不要とすることです。
具体的には、役所が発行する簡単な文書にまで角印を捺す必要はない、例えば最近コロナで話題になっているお金を給付する給付金に印鑑は不要ですが、契約を結ぶ必要がある補助金や助成金には必要なんですね。
つまり重要な契約にはこれからも印鑑が必要になりますし、また登録印以外の印として角印も必要になります。
請求書に角印が捺していないと、支払ってもらえないかもしれません
これは実際にとある経営者様の言葉をご紹介したいと思います。
その方はとある中小企業の社長様。
ちなみに会社の印鑑は、全てその方が捺すルールになっています。
最近、押印廃止の意味を勘違いして、請求書に角印を捺していない取引先があるんですよ。
まあ国の言い方も悪いんですけど、困ったものです。
だって角印を捺していない請求書なんてイラストレーターとか使えなくても、誰でも簡単に作れちゃうじゃないですか?
こう言っちゃ悪いですけど、社員が誤魔化して勝手に作ることだってできる。
法人の印って、中に「代表取締役印」だったり「代表者の印」だったりと入っているわけです。
つまり代表者が「この請求書の発行を認めた」のしるしに捺すものです。
角印だって社名で彫ってありますから、会社に責任があり、その責任は全て代表者にあるわけです。
責任者の印がない請求書に対して、支払えるわけないじゃないですか?
なので私は角印がない場合、改めて捺してもらっています。
間違ってないですよね?
厳密に言えば、角印が捺していないからといって支払い義務がなくなるかと言うと、当然別問題です。
でも考え方として、正しいのではないでしょうか。
ではここで、角印の法律上の扱いについて書いておきます。
そもそも角印は、法的に義務化されているものではありません。
ではなぜ角印を捺すのかと言うと、トラブルを避けることが目的です。
請求書に角印が捺してあれば、その会社が正しく発行したことが法律上推定されますし、何より信頼度が増します。
なぜ信頼度が増すかと言うと、印鑑が捺してある請求書を偽造した場合は、有印私文書偽造で3カ月以上5年以下の懲役となってしまうからです。
ちなみに印鑑のない請求書を偽造した場合は、無印私文書偽造で1年以下の懲役または10万円以下の罰金。
つまり印鑑が押されている請求書の偽造の方が罪が重いため、印鑑を用いた不正がしにくくなり、信頼度が増すと言えます。
それらを包括的に考えるとこのご意見は、角印の目的の「トラブルを避けること」にあたりますね。
そもそも契約は口頭でも成立するんですけど「言った、言わない」になるので契約書を交わします。
契約書にも重要度があります。
つまりお客様にお支払いを求めるのであれば、正しい請求書を作成することがマナーであることを、この社長様は伝えたかったのですね。
最後に
日常生活の中で、印鑑の有無を大きく意識する機会はそれほど多くないかもしれません。
でも一方で、今回のようにいざと言うときに足元を見られてしまう可能性も秘めています。
もちろんとりあえず捺しておけばよいというものでもありませんので、それらを背景を踏まえた上で、もう一度その捺印の意味を考えていただけたらと思います。
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