民生はハード材?金丹や銀丹に施される材質の違いを徹底解説
伝説の象嵌師「民生」さんが手がけた象牙印章や、伝統工芸品でもある金丹・銀丹が施された象牙印章。
それぞれの印材に用いられる材質や特徴について、今回印章愛好家の方からご質問をいただきました。
今回は、これらの素材の違いや、金丹・銀丹の品質の違いについて掘り下げて解説します。
民生(象嵌印材含む)はハード材?
象牙印材は大きく「ハード材」と「ソフト材」に分かれます。
それぞれに細かい特性がありますが、その名の通り固いか柔らかいかが違います。
そして「民生」として使用される象牙印材は、基本的にはハード材が使われてきたとされています。
これは、象牙印材が豊富に供給されていた時代には、高品質なハード象牙を贅沢に使える環境にあったからです。
また「民生」を求められる方は、印材に高品質も求めていることも大きな要因になっているとも言えるでしょう。
一方で発注者による例外も
ただし印材の選定はすべて一律ではなく、発注者の希望でソフト材を使用することも一部にはあったようです。
しかし、そのような例は稀であり、多くの民生や象嵌印材は、ハード材であると考えるのが妥当です。
また印材がハード材かソフト材かを正確に判断するには、私の場合に限っては、実際に彫刻してみなければわからない という職人ならではの難しさもあります。
金丹・銀丹に施される材質の違い
次に、金丹と銀丹の印章に使われる象牙の材質について解説します。
まず象牙の品質は、上から「極上・特上・上上・上・中・並」と6段階に分かれます。
そして上下の印「丹」に使用される材質も、ある程度象牙の品質に連動する傾向があります。
金丹入印材の特徴
- 使用される象牙の等級:極上・特上・上上
- 緻密な網目模様と美しい質感が特徴です。
- 高級感を求めるお客様に愛用されています。
銀丹入印材の特徴
- 使用される象牙の等級:上・中・並
- 網目がやや粗く、素朴な風合いが楽しめます。
- 粗さを含めた自然な質感も、象牙の魅力とされています。
一方で発注者による例外も
ただし印材の選定はすべてルールがあってではなく、発注者の希望に依存ことは、前述の民生と同様です。
ちなみに鈴印デッドストックには、極上の銀丹がラインナップされていることからも、おわかりいただけるかと思います。
とはいえこちらも特殊な例でありますので、金丹が入っている=最高品質とお考えいただいてほぼほぼ問題ないでしょう。
象牙印材の楽しみ方
象牙の印材は、そのキメの細かさや粗さ、そして使い込むことで変化する風合いが楽しめます。
またキメが荒いことは逆に味わい深い個性として捉えることもできます。(もちろん荒すぎることはヒビの原因になるなど、印章として問題がありますが。)
象牙という天然の素材ですから、このように包括的に捉えることで、本来の奥深さをより感じられるでしょう。
最後に
今回の解説では、民生の印材がハード材かどうか、そして金丹・銀丹に使用される象牙の材質について掘り下げました。
象牙印材の選定や品質は、発注者の意向や時代の背景によっても変わることがあり、非常に奥が深いものがあります。
印章の魅力を知り、愛用する楽しさをぜひ味わってください。
コメント